結論
海外の教育で共通して重視されているのは、教科の知識だけでなく、好奇心・粘り強さ・自制心・協働といった「社会情動的スキル」と、自分で考え学び続ける力です。OECDの国際調査、フィンランドの国家カリキュラム、IB(国際バカロレア)の学習者像は、いずれも「何を知っているか」より「どう学び、どう人と関わるか」を子どもの育ちの中心に置いています。
要点
- OECDは好奇心・粘り強さ・自制心・協働などの社会情動的スキルを国際調査で測定している
- OECDの調査では、粘り強さ等のスキルや好奇心が高い子ほど成績も良い傾向がある
- フィンランドは全教科を貫く7つの「汎用的コンピテンス」を国家カリキュラムに明記
- IBは「探究する人」「考える人」など10の学習者像を教育の目標に掲げる
- 共通するのは「知識の量」より「学び方・考え方・人との関わり方」
理由・背景
OECD: 社会情動的スキルが学力とも結びつく
OECD(経済協力開発機構)は、自制心・ストレス耐性・協働・社交性・好奇心などを「社会情動的スキル」と呼び、10歳と15歳を対象にした国際調査(SSES)で測定しています。2023年調査の結果では、ほぼすべての社会情動的スキルの高さが数学・読解・芸術の成績の良さと結びついており、なかでも達成動機・粘り強さ・責任感・自制心といった「課題遂行スキル」と好奇心が、成績と最も強く関係していました。テストで測る学力と、こうした非認知的な力は対立するものではなく、むしろ支え合う関係にあるということです。
フィンランド: 教科を横断する7つの力
教育先進国として知られるフィンランドの国家コアカリキュラム(2014年版)は、「思考と学ぶことを学ぶ力」「文化的コンピテンスと自己表現」「日常生活の管理」「マルチリテラシー」「ICT活用」「働く力と起業家精神」「参加と持続可能な未来づくり」という7つの汎用的コンピテンス(transversal competences)を定めています。これらは特定の教科として教えるのではなく、すべての教科の授業の中で育て、評価するものとされています。
IB: 10の学習者像という人物像
文部科学省のIB教育推進コンソーシアムによると、IB(国際バカロレア)は「探究する人」「知識のある人」「考える人」「コミュニケーションができる人」「信念をもつ人」「心を開く人」「思いやりのある人」「挑戦する人」「バランスのとれた人」「振り返りができる人」という10の学習者像を掲げています。3〜12歳対象のPYP(初等教育プログラム)では、この人物像を幼児期から探究学習を通じて育てます。能力を教科の成績ではなく「どんな人に育ってほしいか」で描いている点が特徴です。
Atelier Whyの考え方
編集部は、この世界的な流れは幼児期の家庭にもそのまま当てはまると考えています。Atelier Whyの曜日別テーマ(五感/SEL/数/ことば/多様な視点)はIB PYPの探究テーマを参考にしており、英語の動画を「英語の勉強」としてではなく、好奇心や感情理解、多様な視点を育てる素材として選んでいます。3歳前後なら歌とリズムで「楽しい」という感情の土台を、5〜6歳ならNumberblocksやSesame Streetのようなチャンネルで「なぜ?」を考える経験を。英語はあくまで入り口で、その先にあるのは上に挙げたような「学び続ける力」だというのが編集部の軸です。
今日からできること
- 子どもが夢中になっていることを1つ見つけ、途中で口を出さずに最後までやらせてみる(粘り強さの練習)
- 「今日いちばん面白かったことは?」と1日1回聞き、答えをそのまま受け止める
- 動画や絵本のあとに「どう思った?」「どうしてだと思う?」と1つだけ問いを足す
- IBの10の学習者像を眺めて、わが子にすでにある芽を1つ探してみる
- 失敗した場面で結果ではなく「挑戦したこと」を言葉にして認める
よくある質問
社会情動的スキルは生まれつきではないのですか?
OECDは、これらのスキルは固定的なものではなく、学校・家庭・社会の環境によって育てられるものだという前提で調査を行っています。実際に2023年調査では、学校環境がスキルの発達に影響しうることが示されています。性格を変えるという話ではなく、経験の機会を増やすという考え方です。
日本の教育は遅れているのでしょうか?
そうとは言えません。日本の学習指導要領にも「学びに向かう力・人間性等」という柱があり、方向性は世界の流れと重なっています。また文部科学省はIB認定校の拡大を推進しており、海外の枠組みを取り入れる動きも進んでいます。家庭でできることの多くは国を問わず共通です。
英語より先にこうした力を育てるべきですか?
順番の問題ではなく、同時に育つものだと編集部は考えています。たとえば英語の歌で体を動かすことは自己表現の、ストーリーを見て「次はどうなる?」と考えることは思考の練習になります。大切なのは「勉強」として切り分けず、楽しい体験の中に問いと関わりを混ぜることです。